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エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。 時に短編小説もあるかも?
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 目付きの悪い男が入ってきた時、ユンファは一目で彼がマフィアだと感じ取った。だからといって拒むわけではないが、住み込み手伝いのキーリに視線で、気をつけておけと伝える。
 男は銭湯は初めてのようで、非常に興味深そうにきょろきょろと見回していた。
「これが有名な銭湯か。先頭切って入らないと。くっ、くくくっ。」
 ぶつぶつと呟く彼に、キーリは明らかに怪訝な表情をしている。
「どれどれ、中も見せてもらおうか。」
 靴下も脱がないまま浴場へ向かおうとした彼を、キーリが止めた。
「あんた、ちゃんと脱いで入らないと、あのデカイ姐さんに殺されるぞ?」
 止められてくるりと男がユンファを見る。見られてユンファは、悲鳴が上がる中、全裸の男の群れを掻き分け、見るからに胡散臭い男に近づいた。
 髪は黒、目は青。目付きが非常に悪いが、笑っているのでどうしようもなく不気味である。顔立ちは悪くないはずなのに、とてつもなく残念な雰囲気が漂っていた。
「服を脱いで入るんだ。」
 それが銭湯での決まりである。
 銭と湯の神様を最近自称してしまったユンファは、もう、怖いものなどなかった。彼が銃を取り出したとしても、人間、死ぬ時は死ぬのである。それならばびくびくするよりも言いたいことを言って死にたい。
「服を脱げと?」
 大仰に芝居がかって彼が言う。
「お嬢さん、俺はチャイ。俺に服を脱げってことは、そういうことだよな?」
「はっ?あんた、頭膿んでるんじゃないか?」
 即座にユンファの拳が男、チャイの頭を殴っていた。殴られてチャイは、げふぅとよろける。
「ま、待ってくれ。俺の話を聞け。」
「なんだい?」
「服は脱げない。」
 もったいぶるチャイを睨みつけるユンファに、どうなることやらと様子を見るキーリ。

「武装はとけない。物騒だからな。」

 銭湯の空気が、凍った。
 その中でチャイがくすくすと笑っている。
「武装、物騒、ぶそう、ぶっそう……くくくくっ。」
「黙って脱げ!」
 お客様は神様ですなんていう言葉はこの銭湯には存在しない。
 ユンファが神だ。もうユンファは開き直っていた。
 ごつい手でチャイを殴り倒し、てきぱきと服を脱がすユンファ。すっぽんぽんにされて、チャイは口元から血を垂らし呻いている。
 その背中に、炎と龍の刺青を見つけて、ユンファは静かに言った。
「あ、ここ、刺青禁止だから。」
「え!?」
 キーリが止める間もなく、ユンファは全裸のチャイを小脇に抱えて、脱がせた服とともにぽいっと銭湯の外に投げ捨てる。
「刺青だけに、隅におけないお嬢さんだ。」
 全裸で放り出されながら、チャイは弱々しい声で呟き、自分でうけて笑っていた。
「キーリ、次からあの客見たら、追い返しておくれ。」
「せめて服を着せてから……。」
「追い返しておくれ。」
「は、はい。」

 異邦人街の銭湯でも、あからさまな刺青の方は遠慮しましょう。
 一般の方を驚かせます。

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瑠璃恵那(ルリエナ)

性別:男 年齢:42 身長:193センチ
運営の医療班
普段は青みがかった灰色の髪に青い目 ちょっと年より若い美中年
水を見たり、驚いたりすると、化けの皮が剥がれる
(青みがかった灰色の髪に青い目 全身に魚っぽい鱗有り 水かきもある)

異能:水使い
水の流れを操ることができる(主に止血)
また、成分を少しだけ変えることができる(生理食塩水とか)
ただ、自分の腕の届く範囲でしかできない


ルリエナで、一つの名前。自分で変な名前と思っている。
魚の獣人。(何か日本語が変だ。笑)
しかも、男。
性格は温厚だが、はっきりとものを言う。
歌が好きで鼻歌をよく歌っている。
水の中が好き。
所属関係なく誰でも助ける検診的な医者。
普通の医療技術も持っている。
ただし、水を見たりびっくりすると外見、男人魚になる。
一年中海が恋しい。
体温調節がうまくいかないので、寒い時期が苦手。
研究医として、実地は経験少ない。
研究医は名目で、老化が遅い人魚の研究のために実験道具にされていた。
そのため、ウロコがばれるのを怖がる。
女性にはウロコで逃げられ続けて、もう諦めている。

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 一番風呂は風呂屋の特権である。ユンファはそう決めていた。誰がなんと言おうと、ここでは自分が法律だ。まぁ、スペシャルマイペースなユンファはいつだって、自分が法律なのだが。
 いつもは独り占めする風呂に、今日はレノリアを招いたのには、少しばかり理由があった。聞いてみたいことがあったのだ。
 元々恥じらいと胸のないユンファは、全裸で風呂場に入り、がしゃがしゃと体と髪を洗う。レノリアは白い体をタオルで隠しつつ、洗っていた。普段は緩やかに波打つ髪が、水に濡れて体に貼りつき、色気を醸し出している。
「湯船にタオル、つけないでおくれよ。」
「分かってるわよ。」
 何度か風呂に招いたので慣れているレノリアは、早朝の掃除したばかりの広い風呂に、ゆっくりと浸かった。続いて、ユンファの骨太で大柄な褐色の体が浸かる。もちろん、ユンファはタオルを頭に巻いて、髪が湯船に浸からないようにしていた。
「はぁーたまんないね。」
 うっとりと目を細めるユンファに、レノリアも「同感だわ。」と小さく呟く。お湯の温度はやや高めだが、それが疲れた体を癒してくれていた。
「ねぇ、レノリア。ファンクって、知ってるかい?」
 見を乗り出すユンファに、レノリアは頷く。
「ええ。それが、何か?」
 確か、実戦部隊のレヴィや門番のプルウィアと仲が良かった獣人を記憶の中から引きずりだしたレノリアに、ユンファは眉間にしわを寄せた。
「私ってさ、どう思う?」
「え?いや、かっこいいと、思うわよ。」
 急に問われて、レノリアは返答に困って妙なことを言ってしまった。ユンファがどんな答えを求めているか、レノリアには全く予測もつかない。
「どうしたの、ユンファ?」
「それが、分からなくて困ってるんだ。」
 ため息をつくユンファはいつもの自信満々な彼女ではなく、レノリアは一番に栄養不足を疑った。
「ちゃんとご飯食べた?」
「食べたよ。炒飯と、バンバンジーと、玉子スープと、餃子60個と、肉まんと、角煮と、皿うどんと……。」
 聞いているだけで胸焼けがしてきそうなメニューに、レノリアはストップをかけた。
「分かった。分かったから。」
 すると、ユンファが急に視線をレノリアの胸部に落としてくる。じっと胸を見つめられて、レノリアは腕で胸を隠した。
「何?肉がちょっとついてるけど、これは、食べられないわよ?」
 食べ物の話をしたので食欲がわいてきたのかと警戒するレノリアに、ユンファは意外なことを口にする。
「胸って、あった方がいいのかねぇ?」
「え?」
「私、あの尻尾が、どうしても欲しい。他の女のものになるなんて、絶対嫌だ。」
 それがファンクのことだと気づいて、レノリアはようやく、自分が恋愛相談のようなものをされていたことに気付いた。それにしても、尻尾とは。欲しいのは尻尾だけなのだろうか。
「ねぇ、もしかして。」
 言いかけて、この鈍いユンファが自分の気持に気づいていないのではないかと思い、レノリアは口を閉じる。
 もしかすると、違うかもしれないし、そうであっても、この鈍い女友達を手放したくないという独占欲のようなものがわいてきたのだ。
「のぼせそうだわ。私、上がるわね。」
 立ち上がったレノリアに、ユンファも続いた。どこかぼんやりとしたユンファが、石鹸を踏んでずっこけて、レノリアの異能で倒れる前に止めてもらって、支えてもらうまで、後5秒。
 天井から雫が垂れて落ちていた。

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 その青年には、右の目を通るようにして頬まで傷があった。
 だから目を引かれたわけではない。濃い紫色の髪が、黒髪に見えたからでもない。朗らかに笑う様子が、誰かを思い出させたからでもない。
 ただ、目障りだと思った。
 自分よりもずっと長身の彼が。
「邪魔なんだよ!デカイ体で道を塞ぐんじゃねぇ!」
 まず、フェンリルの口から出ていたのは、罵りの言葉だった。急に怒鳴られて、ギルド本部の出入り口付近で空音と話していたフロットは戸惑う表情になる。
「いや、塞いでるつもりはなかったんだが、悪かった。」
 真面目に謝られて、ますます腹が立つ。それが、空音が原因だなど、フェンリルはカケラも思っていなかった。
「頭の上から偉そうに物を言うんじゃねぇよ。なんだ?謝れば何でも許されるのか?」
 完全なる言いがかりと自分でも分かっているが止められないフェンリルに、空音がきょとんとして二人を交互に見ている。
「フェン、どうしたの?なんか、怖いよ?」
 空音の声に、フェンリルは顔を歪めた。
「別に、そういうでかい男が好みなら、一緒にどこにでも出かけるといいさ。」
 いつもトレードマークのように着ている赤いパーカーのポケットの中で、飴の包みがかさりと音を立てる。

 手に入れられない。
 手に入れたくない。
 いつだってそうだ。
 手に入りそうになると、自分は壊してしまう。
 今までだって、好ましいと思う相手がいないわけではなかった。
 だが、姉の存在はいつだって、フェンリルの体の一番柔らかな部分に食い込んでいて、外せばただでさえ傷だらけの内面を、ずたずたに切り裂きかねない。
 だから、手に入る前に、手を放してしまう。
 それが、お互いの幸せなのだ。

 一番欲しいものは、いつだって、手に入らないのだから。

 ふと、手を握られてフェンリルは我に返った。空音が真剣な表情でフェンリルの片手を握っている。そして、もう片方の手は、青年の手を握っている。
「ボク、よく分かんないけど、喧嘩したら、仲直りをするんだよ。ね。フェンも、フロットも、握手。」
 無理矢理に握手をさせられて、フェンリルはようやく青年の顔をはっきりと見た。人の良さそうな優しげな顔立ち。
「フロットね、バク転できるんだって聞いたから、サーカスに誘ってたの。フェンは、フロットがサーカスに入るのは、嫌だったの?」
 完全に勘違いしている空音に、フェンリルは一瞬痛みをこらえるような表情をした後、緩く笑った。
「さぁな。バク転なら、俺もできるよ?」
「そうなの、フェン?」
「でも、見世物はごめんだな。」
「えー!フェンもサーカスー!」
 甘えた口調になる空音に、フェンリルはようやく我を取り戻しつつあった。まだ手を握らされている青年は、戸惑った表情でフェンリルを見ている。
「俺、あんたに何かしたか?」
「いや、デカイ奴見ると、むかつく体質なの、俺。」
 軽く言うと、青年、フロットは顔を顰めた。
「身長は、俺の責任じゃないよ。」
「まぁな。俺の身長も俺の責任じゃないしな。」

 もう少し。
 もう少し大きかったら。
 もう少し強かったら。
 あの小さな手を離さずにすんだのだろうか。

「フロットだ。見張りやってる。」
「フェンリルだよ。実戦隊だ。」
 名乗りあい、強く手を握りしめてから、二人は手を離した。
「仲直りだね。」
 空音が微笑む。
「くぅに、妙なことするなよ?」
 そっとフロットに囁くと、納得がいったのかフロットは声を上げて笑い出した。
「あぁ、それで。了解。それにしても、前途多難そうだな。」
「はぁ?俺は、くぅが妙な奴に引っかからないか心配してだな。」
「分かった分かった。」
 軽くあしらわれて、フェンリルは憮然としてから、パーカーのポケットに手を突っ込む。指先に飴の包みが触れた。
「くぅ、これ、新しい味の奴。生姜入ってて、体暖まるんだって。」
「生姜!?辛くないの?」
 受け取りながら、早速包み紙を剥く空音。ついでとばかりに、フェンリルはフロットに一つ飴を投げた。
「見張り、ご苦労さん。体冷やすなよ。」
「女じゃないんだから、体冷やしても関係ないだろ。」
 笑いながら受け取るフロットに、フェンリルは肩をすくめた。傍らで、空音が「からーい!」と涙目になっている。

 その傷はいつ付いたのか。
 過去を聞ける時、自分の過去も話せるだろうか。
 愚かしくも馬鹿らしい、大事な姉のことを。

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 三つ編みの金髪に青年の後にごく自然に男湯に入って来た金髪の女性を、ユンファはすんでのところではっしと止めた。最近、女装の少年も来たから、一応、確かめる。
「あんた、性別は?」
「女ですけど。」
 なぜ問われたのか分からないといった風情できょとんと答えた彼女に、ユンファは語調を荒くした。
「こっちは男湯!男が入るお湯だよ!」
「でも、エリィが入って行ったから。エリィを一人にするわけにはいきませんわ。」
「エリィ!?」
 訝しげにユンファが眉を顰めると、男湯から騒ぎを聞きつけて、半分脱ぎかけた先程の金髪の三つ編み青年が出てきた。
「姉ちゃん、なにしてるんだよ?」
「だって、お姉ちゃんがいないと、エリィは髪をちゃんと乾かさないままにしておくでしょう?軍のお風呂が改築中だから来たけど、やっぱり、エリィにはお姉ちゃんがついててあげないといけません。」
「ここは銭湯だし、軍の風呂も男女分かれてるだろ?」
「でも、部屋から近いです。ここだと帰るまでに、風邪を引いてしまいます。」
 真剣な姉弟のやり取りに、ユンファは思わずむんずと弟、エリィの三つ編みを掴んだ。
「入り口でごちゃごちゃもめないでくれるかね。あんたが髪をきっちり乾かせばいいだけの話だろう。ほら誓えよ、銭湯の掟、銭と湯の神、この私、ユンファ様に。」
 自分でもやけになって何を言っているか分からなくなりつつも、ユンファはエリィに誓わせる。
「姉ちゃん、この神様って人に誓うから。絶対髪は乾かす。だから、男湯には入って来ないでくれ。」
「ちゃんと、歯も五分以上磨くんですよ?」
「誓うよな?」
 大柄で骨太なユンファに座った目で脅されて、エリィはそれも誓った。
「じゃあ、お姉ちゃんは女湯に行きますね。」
「あ、姉ちゃん!何かあったら、俺を呼べよ?」
「エリィも。」
 今生の別れのような二人のやり取りに、ユンファは辟易して顔面を崩していた。

 銭湯では、自分の性別に合った湯に入りましょう。

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