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エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。 時に短編小説もあるかも?
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 その色彩は、体の奥底の嫌な記憶を引っ掻いた。
「でかい体で邪魔なんだよ!」
 考えるより先に足が動いて、フェンリルは自分よりはるかに長身の青年の脛を蹴飛ばしていた。ギルドの本部の食堂は昼をかなり過ぎていて、空いていた。そんな中、ぼーっと突っ立っている黒髪に茶色の目の優しげな顔立ちの青年は、フェンリルが座ろうと思っていたいつもの隅の席に向かうのにとても邪魔だったのだ。
 丼を乗せたトレイを持ったまま睨みつけるフェンリルに、蹴られたことに抗議するでもなく「す、すみません。」と謝ってしまう彼。その姿はますます誰かを思い出させる。
 自分の代わりに何でも謝ってしまう姉。欲しいものは先回りして、自分に譲ってくれた姉。
「あんた、座らないのかよ?」
 苛立ちながら強い口調で言うと、びくびくしながら、青年はフェンリルの斜め前の席に座った。どうやら、彼も隅のテーブルがお気に入りのようだ。
「フェンリル、さんですよね?」
「そうだけど、なにか?」
 野郎にくれてやる笑顔はないとばかりに仏頂面で答えると、青年はますます縮こまる。
「公園で、野良猫とか、野鳥とかと一緒にいたから…。」
 もそもそとサンドイッチを食べ始めた青年に、フェンリルはため息をついた。
「ちょっと知りたいことがあったから、聞いてただけだよ。」
 それからは、がつがつとフェンリルが食べる音と、青年がもそもそと咀嚼する音だけが響く。
 先に食べ終わって立ち上がりかけたフェンリルだったが、パーカーのポケットに入っていた公園で出会った少女にもらった飴の存在に気付き、ぽんとそれを青年に投げてよこす。透明な袋に包まれた桃色の飴。
「貰い物だけど、やる。蹴って悪かった。」
 癖のない艶やかな黒髪。
 ティーエ。
 フェンリルは正面きって会うことの出来ない姉を思った。

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