エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。
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両手ではとても足りなかった。ティーエの能力は手のひらを媒体にしている。この小さな手のひらの範囲しか干渉できないのだ。しかし、ナイフで切り裂かれたその人物の傷は多くて、浅い傷だが混乱してしまった。
「誰か、助けて下さい!」
思わず口にしてから、ティーエは涙目になる。ここは人通りの少ない場所だし、もし人が通っても怪我人と、医者とはとても見えない自分では、助けてくれないだろう。フェンリルを探すために入り込んだ狭い路地で、ティーエは怪我を負っている青年に出会ったのだ。
「た、大した、こと、な、ないから。ね、泣かない、で?」
逆に慰められて、ティーエは困り果てた。
「浅い傷でも、これだけあると、出血量で倒れますよ。男性は女性よりも出血のショックに弱いんです。」
理を解こうとしても、青年はきょとんとしていた。黒髪に黒い目の青年だ。恐らくはマフィアだろう。けれど、怪我人にマフィアも民間人もない。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
覗き込んできた青銀の髪の少年の肩には、鮮やかな色の孔雀が止まっていた。くるくるふわふわとした髪が可愛い、少女のような少年。
「助けます。泣かないで?」
そう言って少年は歌い出した。空気を震わせる美しいボーイソプラノ。それに伴い、青年の傷が癒えて行く。
「血が止まってる。今のうちに診療所に来て下さい。あなたが怪我をしたら悲しい人が、絶対にいるはずだから。」
真剣なティーエの琥珀色に目に、青年は気圧されたようだ。
「は、はは、はい。」
少年の歌声と共に、三人は診療所に向かった。
青年の傷は派手だったが、本人の申告通り、酷くはなかった。太ももを走る裂傷と、胸の傷、腕の傷も、広いが浅い。
全て止血して包帯を巻くと、ティーエはほっと息を吐いた。そして、笑顔で青年と少年にココアを渡す。
「もう大丈夫ですから。しばらくは、安静にして下さいね。」
「あ、あん、せい?仕事、仕事、しては駄目?」
「傷が開かない程度なら。」
「は、はい。ありが、とう。」
子どものように微笑む青年に、ティーエは安心させるように笑顔を見せた。
「あの、ありがとうございました。私はティエンリー。ティーエって呼ばれてますけど。すごく助かりました。」
少年に頭を下げると、少年はふるふると首を降った。
「ティーエさん、役に立てて良かったです。ココア、おいしい。ありがとう。」
無邪気に微笑む少年を、ティーエは思わず抱きしめてしまう。ティーエの方が小さいので抱きつく形になってしまったが。
「いいえ、本当に、助かりました。心細くて。」
弟を探して一人歩き回る異邦人街。心細かったことに、ティーエすら気付いていなかった。
「ティーエさん、大丈夫ですよ。大丈夫。」
少年の言葉にティーエは顔を上げた。
「僕はセレーレです。また、何かあったら…ううん、何もなくても、またココアを飲みに来てもいい?」
「ぼ、僕も、い、い?」
青年も声をあげて、ティーエは当然、頷いた。
「もちろんです。」
「誰か、助けて下さい!」
思わず口にしてから、ティーエは涙目になる。ここは人通りの少ない場所だし、もし人が通っても怪我人と、医者とはとても見えない自分では、助けてくれないだろう。フェンリルを探すために入り込んだ狭い路地で、ティーエは怪我を負っている青年に出会ったのだ。
「た、大した、こと、な、ないから。ね、泣かない、で?」
逆に慰められて、ティーエは困り果てた。
「浅い傷でも、これだけあると、出血量で倒れますよ。男性は女性よりも出血のショックに弱いんです。」
理を解こうとしても、青年はきょとんとしていた。黒髪に黒い目の青年だ。恐らくはマフィアだろう。けれど、怪我人にマフィアも民間人もない。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
覗き込んできた青銀の髪の少年の肩には、鮮やかな色の孔雀が止まっていた。くるくるふわふわとした髪が可愛い、少女のような少年。
「助けます。泣かないで?」
そう言って少年は歌い出した。空気を震わせる美しいボーイソプラノ。それに伴い、青年の傷が癒えて行く。
「血が止まってる。今のうちに診療所に来て下さい。あなたが怪我をしたら悲しい人が、絶対にいるはずだから。」
真剣なティーエの琥珀色に目に、青年は気圧されたようだ。
「は、はは、はい。」
少年の歌声と共に、三人は診療所に向かった。
青年の傷は派手だったが、本人の申告通り、酷くはなかった。太ももを走る裂傷と、胸の傷、腕の傷も、広いが浅い。
全て止血して包帯を巻くと、ティーエはほっと息を吐いた。そして、笑顔で青年と少年にココアを渡す。
「もう大丈夫ですから。しばらくは、安静にして下さいね。」
「あ、あん、せい?仕事、仕事、しては駄目?」
「傷が開かない程度なら。」
「は、はい。ありが、とう。」
子どものように微笑む青年に、ティーエは安心させるように笑顔を見せた。
「あの、ありがとうございました。私はティエンリー。ティーエって呼ばれてますけど。すごく助かりました。」
少年に頭を下げると、少年はふるふると首を降った。
「ティーエさん、役に立てて良かったです。ココア、おいしい。ありがとう。」
無邪気に微笑む少年を、ティーエは思わず抱きしめてしまう。ティーエの方が小さいので抱きつく形になってしまったが。
「いいえ、本当に、助かりました。心細くて。」
弟を探して一人歩き回る異邦人街。心細かったことに、ティーエすら気付いていなかった。
「ティーエさん、大丈夫ですよ。大丈夫。」
少年の言葉にティーエは顔を上げた。
「僕はセレーレです。また、何かあったら…ううん、何もなくても、またココアを飲みに来てもいい?」
「ぼ、僕も、い、い?」
青年も声をあげて、ティーエは当然、頷いた。
「もちろんです。」
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