エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。
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ぴょこんと公園の茂みから飛び出してきたウサギに、フェンリルは多少戸惑った。この公園に野生のウサギはいなかったはずだし、このウサギは明らかにリードをつけている。
「お前、逃げてきたのか?」
呼ぶと寄ってきたそのウサギを抱き上げた瞬間、見つめてきた双眸にフェンリルは手を止めた。
「それって、ウサギさんだよねっ?」
快活に問われて、勢いに負けてフェンリルは頷いてしまう。
「あ、あぁ。ウサギだな。どこからどう見ても。」
「君が飼ってるの?ボクも抱っこしていい?」
言い終わるより前に手を差し出してきたのは、小柄なフェンリルよりも更に小柄な少女。
「俺のじゃないよ。迷子みたいだ。そっと抱けよ。」
自分よりも年下で小さな子はどことなく姉を思わせて、無下に出来ず、フェンリルがそっとウサギを渡してやると、耳の垂れた白いウサギは縫いぐるみのようにおとなしく少女の腕に収まった。
「じゃあ、誰のかな?っていうか、君は誰だったっけ?」
くるくると変わる表情。言葉。ついていけずに、いつものお得意の皮肉も出ずに、フェンリルは素直に答えてしまう。
「俺は天狼(ティエンラン)。フェンリルって呼ばれる方が嬉しいけど。」
「フェンリルだね。フェンリル。うん、覚えた。飴、食べる?」
ウサギの礼なのか差し出された透明な袋に入った薄桃色の飴を、フェンリルは受け取ってしまった。受け取らなかったら彼女が泣くような気がしたのだ。
「あんたは?」
「ボクは空音。くぅって呼ばれる。」
名乗った彼女に、フェンリルは僅かに笑ってしまった。
「くぅ、か。可愛いんじゃないか。」
「そう?」
いかにも姉が好みそうだと思って、笑ってしまったのに、空音は嬉しそうに顔を輝かせる。
「さて、ウサギの飼い主を探さないと。きっと、こいつ、探されてる。」
言いながら、フェンリルが両手を広げると、公園の木々に止まっていた野鳥たちが集まって腕に止まってきた。
「うわっ!?なにこれ?大丈夫!?」
「大丈夫。ほら、教えろよ、こいつの飼い主はどこにいるんだ?」
野鳥たちに囁きかけると、情報を求めて野鳥たちは散り散りに飛んでいく。気がつけば、足元には野良猫が数匹まとわりついて来ていた。
「それが君の能力?」
「そうだよ。別に隠しちゃいないし、ここで隠す必要もないし。」
ギルドの支配するこの地区でなら、確かにギルド所属のフェンリルが能力を隠す必要もなかった。
「それに、くぅもギルドだろ?」
特に、ギルド所属らしき空音の前では。
「うん。ボクの能力は……。」
「言わなくていいよ。分かる時に分かる。ほら、いい子が飼い主を見つけたみたいだ。」
真っ直ぐにフェンリルを目指して飛んできたメジロが、フェンリルの耳に何か囁く。フェンリルは名残惜しそうな空音から、ウサギを受け取った。
「俺はこいつを返してから帰るよ。あんたも、遅くならないうちに帰りなよ。」
自然と優しい言葉が出てきたのは、相手が自分よりも幼く小さかったからかもしれない。歩き出したフェンリルは、空音を振り返らなかった。
帰り道、空音は上空を中型の鳥の影が通りすぎるのを感じて空を見上げた。その時、こつんこつんと、透明な袋に包まれた空色の飴が5,6個落ちてきた。
その飴は、しゅわしゅわと弾けるソーダの味がした。
「お前、逃げてきたのか?」
呼ぶと寄ってきたそのウサギを抱き上げた瞬間、見つめてきた双眸にフェンリルは手を止めた。
「それって、ウサギさんだよねっ?」
快活に問われて、勢いに負けてフェンリルは頷いてしまう。
「あ、あぁ。ウサギだな。どこからどう見ても。」
「君が飼ってるの?ボクも抱っこしていい?」
言い終わるより前に手を差し出してきたのは、小柄なフェンリルよりも更に小柄な少女。
「俺のじゃないよ。迷子みたいだ。そっと抱けよ。」
自分よりも年下で小さな子はどことなく姉を思わせて、無下に出来ず、フェンリルがそっとウサギを渡してやると、耳の垂れた白いウサギは縫いぐるみのようにおとなしく少女の腕に収まった。
「じゃあ、誰のかな?っていうか、君は誰だったっけ?」
くるくると変わる表情。言葉。ついていけずに、いつものお得意の皮肉も出ずに、フェンリルは素直に答えてしまう。
「俺は天狼(ティエンラン)。フェンリルって呼ばれる方が嬉しいけど。」
「フェンリルだね。フェンリル。うん、覚えた。飴、食べる?」
ウサギの礼なのか差し出された透明な袋に入った薄桃色の飴を、フェンリルは受け取ってしまった。受け取らなかったら彼女が泣くような気がしたのだ。
「あんたは?」
「ボクは空音。くぅって呼ばれる。」
名乗った彼女に、フェンリルは僅かに笑ってしまった。
「くぅ、か。可愛いんじゃないか。」
「そう?」
いかにも姉が好みそうだと思って、笑ってしまったのに、空音は嬉しそうに顔を輝かせる。
「さて、ウサギの飼い主を探さないと。きっと、こいつ、探されてる。」
言いながら、フェンリルが両手を広げると、公園の木々に止まっていた野鳥たちが集まって腕に止まってきた。
「うわっ!?なにこれ?大丈夫!?」
「大丈夫。ほら、教えろよ、こいつの飼い主はどこにいるんだ?」
野鳥たちに囁きかけると、情報を求めて野鳥たちは散り散りに飛んでいく。気がつけば、足元には野良猫が数匹まとわりついて来ていた。
「それが君の能力?」
「そうだよ。別に隠しちゃいないし、ここで隠す必要もないし。」
ギルドの支配するこの地区でなら、確かにギルド所属のフェンリルが能力を隠す必要もなかった。
「それに、くぅもギルドだろ?」
特に、ギルド所属らしき空音の前では。
「うん。ボクの能力は……。」
「言わなくていいよ。分かる時に分かる。ほら、いい子が飼い主を見つけたみたいだ。」
真っ直ぐにフェンリルを目指して飛んできたメジロが、フェンリルの耳に何か囁く。フェンリルは名残惜しそうな空音から、ウサギを受け取った。
「俺はこいつを返してから帰るよ。あんたも、遅くならないうちに帰りなよ。」
自然と優しい言葉が出てきたのは、相手が自分よりも幼く小さかったからかもしれない。歩き出したフェンリルは、空音を振り返らなかった。
帰り道、空音は上空を中型の鳥の影が通りすぎるのを感じて空を見上げた。その時、こつんこつんと、透明な袋に包まれた空色の飴が5,6個落ちてきた。
その飴は、しゅわしゅわと弾けるソーダの味がした。
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