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エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。 時に短編小説もあるかも?
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「一人、お願いします。」
 それは、珍しく若い女性の声だった。番台に座っているユンファが金を受け取っているのに、キーリは落ち着かない素振りで背伸びをした。可愛らしい顔立ちの少女がのれんをくぐっていく。
「何、見てるんだい?」
 じろりと睨みつけるユンファの機嫌はよくない。今日は仕事でガラスの中の液体を加熱しすぎて、ガラスを割り、ごつい割に唯一といっていい美点の脚を切ったらしいのだ。
 風呂場も点検するのでいつもホットパンツに素足のユンファだが、今日は左足の脛に包帯が巻かれている。
「チビ先生のところで診てもらったんだけどねぇ。液体も傷口に触れてるから、しばらくは外せないし。」
 ぶつぶつと文句を言うユンファは、脚を撫でて憂鬱顔だった。

 今なら覗ける!

 キーリの本能が体を動かした。
 ぼんやりしているユンファの前をそーっと通り過ぎ、女湯の方へ。
「ちょっと!」
 むんずと襟首を掴まれた時、キーリは死を思った。
「何やってるんだい?」
「いや、姐さんが怪我してるから、女湯のタオル交換に……。」
「行っていいと、思ったのかい?」
「い、いいえ。」
 しゅんと頭を下げたキーリに、女湯でロッカーにポシェットを詰めていた少女が気付いた。
「なに!?この銭湯、覗きがいるの!?」
 最低!と叫ぶ彼女に、キーリが慌てる。ユンファは落ち着いて、キーリの頭を三発殴った。きゅうとキーリがその場にのびて倒れるのを、ぽいっと外に放り出す。
「今日は晩ご飯なし!明日の朝の掃除まで、戻ってこなくていいからね!」
 言い捨てて、ユンファは脚を引きずりながら少女の方に向かった。少女はロッカーの鍵を開けて、中身を取り出そうとしている。
「冗談じゃないわ、覗きが出る銭湯なんて!みんなに言いふらしてやるんだから!ネットでも流すわよ!」
 怒り狂う彼女の手に、ユンファはフルーツ牛乳を握らせた。
「今日のところはこれで。後で、パフェ、おごるから。」
 女性ならば皆くらりとくるであろう、パフェの一言に、少女の目が輝く。
「パフェ?本当?メガ盛り頼んでいい?」
「どうぞ、ご自由に。」
 静かに答えたユンファの手を、彼女はぎゅっと握った。
「私、ラーク。あなた、いい人ね。私、絶対、この銭湯のこと、悪く言わないわ。ホントよ。約束する。」
 飛び跳ねて喜ぶラークに、ユンファは生ぬるい笑みを浮かべた。

 もちろん、パフェの代金は、キーリの給料から引く計算である。

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