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エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。 時に短編小説もあるかも?
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 考える前に、体が動いていた。
 幸いにもそこは人通りのない路地裏で、幼い少年は大きな水槽を必死に手押しの荷台に乗せて運んでいた。綺麗に舗装されていない石畳に、車輪が引っかかって、奇妙なグロテスクな魚の骨の入った水槽が傾く。
 割れると思った。しかも、少年の方に向かって。

 躊躇うことなくルリエナは駆け寄り、少年を抱きとめていた。ガラスの砕ける音と、体に振りかかる塩分の混じった水。
 しっかりと抱きしめていたため、少年はガラスで体を切ることはなかった。ルリエナもウロコが体を守ってガラスを弾いている。
「あ……だ、大丈夫?ごめん、気味が悪いよね。」
 必死に濡れた手でウロコだらけの顔を隠そうとしたら、少年は目をきらきらさせてルリエナを覗き込んできた。
「きれーい!かっこいい!」
「え?」
「お魚さんみたい!」
 ぎゅっと抱きつかれてルリエナは困惑する。
「とにかく、片付けて、早いとこ、屋内に入らないと。」
 言いはするものの、緊張で手が震えて、水かきのある手の平を、ルリエナは拾った大きなガラス片で切ってしまう。
「大丈夫?お魚さん?」
「僕はルリエナ。」
「僕はまりもだよ。」
 お魚と呼ばれたくなくて、必死に抵抗するルリエナに、まりもはにっこりと微笑んだ。
「ウロコもヒレも水かきも、すっごくきれい。水槽で飼いたいくらい。」
 恐ろしいことを言う少年の部屋は、水槽だらけで、ルリエナはぞっとして倒れそうになる。それでも、義務感が先に立った。
「怪我はなかった?」
「うん、ルリエナさんのおかげで。」
 無邪気なまりもは非常に可愛い。それでも、ルリエナはこの空間に耐えられそうになかった。
「じゃあ、僕は、これで。」
「行っちゃうの?」
 悲しげな大きな瞳に、ルリエナは戸惑う。
「ごめんね、仕事があるし、ここだと、いつまで経っても元に戻れない。」
 言いながら、ルリエナはどうすればいいか考えていた。
 今にも倒れそうな気分である。

 助けて欲しい。
 誰に?

 シャツをかぶって顔を隠しながら、ルリエナの足は自然とある場所に向かっていた。
 いるはずがない。
 それなのに。

「どうした、ルリ先生?」
 赤い髪の男がタバコをくゆらせている。
 寄りかかってはいけない。頼ってはいけない。
 けれど、ふらりとルリエナはその肩に、こつんと額を乗せていた。
「気分が、悪くて、どこにも、行き場がなくて。」
 細い声に、くしゃりと男が髪を撫でる。
「じゃあ、俺のところにくればいいだろう?」
 その声に安心して、ルリエナは目を閉じた。

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