エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。
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「アンタ、それ。」
声をかけられて、ルリエナはビニール袋に入れたリンゴを受け取る手を止めた。青紫色の髪の女性が、野菜屋のリンゴを片手に顔をしかめていた。
「これ、腐りかけてるよ。そっちも同じようなもんでしょ?」
「な、何を!?」
文句を言おうとして、野菜屋の店主は相手が袖はないものの軍の制服を着ていることに気づいて口ごもる。
「こういう劣悪品を売る奴が、一番、許せなくてね、アタシは。ほら、アンタ、金返してもらいな。」
渋々金を返す店主に申し訳なさそうな表情を向けてから、ルリエナは女性に近付いた。
「ありがとう。こういうのには、不慣れで、全然分からなくてね。」
礼を言うと、彼女は身長の割に細いルリエナの手首を掴む。
「アンタ、ちゃんと食べてるの?」
「え?食べてるよ。買ったもの、ばかりだけど。」
水がこぼれたりしてかかると困るので、店内で食べることはほとんどせず、持ち帰りのジャンクフードを少し食べるだけのルリエナは、身長の割に体重が非常に少なかった。せめて何か食物繊維を取ろうと思って珍しく野菜屋に寄って買おうとしたリンゴ。それが腐りかけていたなんて。
例えそうであっても、ルリエナは一度受け取った品物に文句をつけたりはしなかっただろう。だから、彼女は恩人のようなものだった。
「僕はルリエナ。変な名前だけど……。」
「ナキカスリ!アンタが変な名前なら、アタシはどうなるのよ!」
ちょっと怒ったような口調に、ルリエナは戸惑ってしまう。
「ナキカスリ、ちゃん?」
「ちょっと、ちゃんとか!?」
真っ赤になって慌てるナキカスリに、ルリエナはふっと笑ってしまった。むっとした表情だと軍の怖い印象が付きまとうが、慌てた赤い顔は歳相応で可愛い。
「お礼に何かおごりたいけど、こんなおじさんは、嫌かな?」
ちょっと躊躇いつつルリエナが申し出ると、ナキカスリは腰に手を当ててため息をついた。
「嫌も何も、お弁当持ってるし。ていうか、ご飯食べたの、アンタ?」
言われて、ルリエナは薄い腹を押さえる。シャツの下の薄い腹は、空腹を訴えていた。
「そう言えば診察が忙しくて、食べてない。」
時刻は昼過ぎ。朝に急患が運び込まれたので、朝も何も食べていないルリエナの腹が、急に鳴り出してルリエナは赤くなる。
「何か作ってあげるから、材料、買って、行くわよ、アンタんち。」
何か体の奥底が痛んだような気がした。
物心ついてから、ずっといろんな場所を転々として、父親と露店のものばかり食べていた。
研究所に囚われてからは、固形のレーションを食べさせられた。
研究所から出てからも、自分で作るなどという考えは全くなかった。
痛んだ場所から、暖かいものがあふれてくるような気がして、ルリエナは切なく微笑む。
「ありがとう。」
「その年で野菜の買い方も知らないなんて、ホント、信じられないわ。」
文句を言いながら、ナキカスリはルリエナと一緒に他の野菜屋で野菜を買い、肉屋で肉も仕入れ、豪華ではないが家庭的な料理を作ってくれた。
「君、よかったら、僕に料理を教えてくれないかな?」
帰りがけにナキカスリを送りながら、ルリエナは思い切って聞いてみる。野菜を洗う程度の水ならば、ウロコは出ないだろう。
「いいけど、アタシはスパルタだよ。」
ルリエナの顔を見ないまま、ナキカスリは答えた。
彼女の青紫の髪は、父親を思い出させた。
声をかけられて、ルリエナはビニール袋に入れたリンゴを受け取る手を止めた。青紫色の髪の女性が、野菜屋のリンゴを片手に顔をしかめていた。
「これ、腐りかけてるよ。そっちも同じようなもんでしょ?」
「な、何を!?」
文句を言おうとして、野菜屋の店主は相手が袖はないものの軍の制服を着ていることに気づいて口ごもる。
「こういう劣悪品を売る奴が、一番、許せなくてね、アタシは。ほら、アンタ、金返してもらいな。」
渋々金を返す店主に申し訳なさそうな表情を向けてから、ルリエナは女性に近付いた。
「ありがとう。こういうのには、不慣れで、全然分からなくてね。」
礼を言うと、彼女は身長の割に細いルリエナの手首を掴む。
「アンタ、ちゃんと食べてるの?」
「え?食べてるよ。買ったもの、ばかりだけど。」
水がこぼれたりしてかかると困るので、店内で食べることはほとんどせず、持ち帰りのジャンクフードを少し食べるだけのルリエナは、身長の割に体重が非常に少なかった。せめて何か食物繊維を取ろうと思って珍しく野菜屋に寄って買おうとしたリンゴ。それが腐りかけていたなんて。
例えそうであっても、ルリエナは一度受け取った品物に文句をつけたりはしなかっただろう。だから、彼女は恩人のようなものだった。
「僕はルリエナ。変な名前だけど……。」
「ナキカスリ!アンタが変な名前なら、アタシはどうなるのよ!」
ちょっと怒ったような口調に、ルリエナは戸惑ってしまう。
「ナキカスリ、ちゃん?」
「ちょっと、ちゃんとか!?」
真っ赤になって慌てるナキカスリに、ルリエナはふっと笑ってしまった。むっとした表情だと軍の怖い印象が付きまとうが、慌てた赤い顔は歳相応で可愛い。
「お礼に何かおごりたいけど、こんなおじさんは、嫌かな?」
ちょっと躊躇いつつルリエナが申し出ると、ナキカスリは腰に手を当ててため息をついた。
「嫌も何も、お弁当持ってるし。ていうか、ご飯食べたの、アンタ?」
言われて、ルリエナは薄い腹を押さえる。シャツの下の薄い腹は、空腹を訴えていた。
「そう言えば診察が忙しくて、食べてない。」
時刻は昼過ぎ。朝に急患が運び込まれたので、朝も何も食べていないルリエナの腹が、急に鳴り出してルリエナは赤くなる。
「何か作ってあげるから、材料、買って、行くわよ、アンタんち。」
何か体の奥底が痛んだような気がした。
物心ついてから、ずっといろんな場所を転々として、父親と露店のものばかり食べていた。
研究所に囚われてからは、固形のレーションを食べさせられた。
研究所から出てからも、自分で作るなどという考えは全くなかった。
痛んだ場所から、暖かいものがあふれてくるような気がして、ルリエナは切なく微笑む。
「ありがとう。」
「その年で野菜の買い方も知らないなんて、ホント、信じられないわ。」
文句を言いながら、ナキカスリはルリエナと一緒に他の野菜屋で野菜を買い、肉屋で肉も仕入れ、豪華ではないが家庭的な料理を作ってくれた。
「君、よかったら、僕に料理を教えてくれないかな?」
帰りがけにナキカスリを送りながら、ルリエナは思い切って聞いてみる。野菜を洗う程度の水ならば、ウロコは出ないだろう。
「いいけど、アタシはスパルタだよ。」
ルリエナの顔を見ないまま、ナキカスリは答えた。
彼女の青紫の髪は、父親を思い出させた。
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