エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。
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ーー私は玩具じゃない。
ーーもう一度言う。
ーー私は、玩具じゃない。
診療所に来た目付きの悪い男は、チャイと名乗った。警戒しながらも、ティーエは彼の怪我を診る。銭湯で殴られたのだという彼は、唇を切って、頭にこぶを作っていた。
「喧嘩は、よくないですよ。」
マフィアの連中に言っても仕方がないのだが、いつも患者には言わずにいられないティーエ。
喧嘩をしてはいけません。
いつだって、ティーエは優等生だった。成績も優秀で、品行方正で。ただちょっと泣き虫で、ことあるごとに弟のフェンリルがティーエを守ってくれていた。
天李(ティエンリー)と天狼(ティエンラン)。
小さい頃は、どっちもティーエと呼ばれていた。遊びのように、女の子のティーエ、男の子のティーエと。でも、優しい弟は呼び名を譲ってくれた。自分は、フェンリルでいい。
毎日、夢に見る。フェンリルがマフィアの抗争に巻き込まれて、大怪我をしているのに、ガラスでも張られたかのように、見ているだけでそちらに行けない夢。
「小さなお嬢さん、ぼーっとして、何を考えてる?」
チャイに声をかけられて、ティーエは我に返った。
「治療は終わりです。これ、唇の傷に塗って下さい。こぶは、しばらく冷やしておいて下さいね。」
保冷剤を古びた冷凍庫から出そうとした時、覆いかぶさるような影に気づいて、ティーエは振り返る。チャイの顔が間近にあった。
「ひゃあ!?」
思わず目をつぶって縮こまるティーエ。しばらくしても、何もされなかったので、恐る恐る目を開けると、チャイが舌を出していた。
「キスでも、されると思った?」
ティーエの頬が紅潮する。からかわれたのだ。自分が小さいから。幼く見えるから。
するりと抜けだして、保冷剤を押し付けて「し、知りません!帰って下さい!」と強く言うと、チャイは困ったように両手を上げた。
「まだ、痛い所があるんだ。」
「え?どこですか?」
嫌なことをされたのに、痛いところと聞くと黙っていられないティーエ。
「腸が、超痛くって。く、くくっ。腸が、超。くくくくっ!」
からかわれたのだとすぐに気づいてティーエは、顔を歪めた。
「帰って!帰って下さい!」
「可愛い顔なのに怒ったらもったいないよ。ほら、笑って。」
するりとチャイの腕がティーエの顎を掴む。そのまま白く細い首を片手で一掴みにされて、ティーエは息を詰まらせた。
「なんて、小さい。細い。お人形さんみたいだ。玩具みたい。かーぁわいい。」
ぐっと手に力がこもって、ティーエは息が苦しくて喘ぐ。怒りと酸欠で目の前が真っ白になる。
すっと両手を前に出して、ティーエはチャイの胸に手を当てた。
従順にも思える仕草に、チャイの腕が離れる。
刹那。
見えない手がチャイの服の下、皮膚の下まで入り込み、どくどくと脈動する心臓を掴んだ。血流が止まるように、けれど握りつぶさない程度に、そっと、それでいて力強く。
心臓を直に握られてチャイが呻く。
「あ……かはっ……!?」
脳が血を求めているが、止められた心臓はそれを送ることができない。だが、意識がなくなるわけではない。
酸欠に陥ってうずくまると、ティーエの手が離れて、チャイの心臓は再び動き出した。ようやく求めていた血を受け取って、脳が正常に動き出す。
「私は、玩具じゃない!もう一度言う。私は、玩具なんかじゃない!」
ぎろりとチャイを睨む目には、ティーエではない怒りの炎が宿っていた。
「ちょっと、チビ先生、怪我!いってえんだよぉぉぉぉぉ!」
盛大に血をまき散らしながら駆け込んできたニカの姿に、ティーエははっとして表情を戻した。
「あ、あの、ごめん、なさい?」
「い、いい、攻撃だったぜ。」
よろよろと診察室を出ていくチャイと、何がどうなったのか、口からだらだらと血を流しているニカ。
「どうしたんですか?」
「早口言葉大会やって、舌噛んだんだよ!わりぃか!このチビ!」
「わ、悪くないです!だから、静かにしましょうね。ほら、血が。」
「ち、ちぃぃぃぃっぃい!?早くなんとかしてくれよ!チビ医者!」
ニカに急かされながら、ティーエはガーゼを取り出した。
ーーもう一度言う。
ーー私は、玩具じゃない。
診療所に来た目付きの悪い男は、チャイと名乗った。警戒しながらも、ティーエは彼の怪我を診る。銭湯で殴られたのだという彼は、唇を切って、頭にこぶを作っていた。
「喧嘩は、よくないですよ。」
マフィアの連中に言っても仕方がないのだが、いつも患者には言わずにいられないティーエ。
喧嘩をしてはいけません。
いつだって、ティーエは優等生だった。成績も優秀で、品行方正で。ただちょっと泣き虫で、ことあるごとに弟のフェンリルがティーエを守ってくれていた。
天李(ティエンリー)と天狼(ティエンラン)。
小さい頃は、どっちもティーエと呼ばれていた。遊びのように、女の子のティーエ、男の子のティーエと。でも、優しい弟は呼び名を譲ってくれた。自分は、フェンリルでいい。
毎日、夢に見る。フェンリルがマフィアの抗争に巻き込まれて、大怪我をしているのに、ガラスでも張られたかのように、見ているだけでそちらに行けない夢。
「小さなお嬢さん、ぼーっとして、何を考えてる?」
チャイに声をかけられて、ティーエは我に返った。
「治療は終わりです。これ、唇の傷に塗って下さい。こぶは、しばらく冷やしておいて下さいね。」
保冷剤を古びた冷凍庫から出そうとした時、覆いかぶさるような影に気づいて、ティーエは振り返る。チャイの顔が間近にあった。
「ひゃあ!?」
思わず目をつぶって縮こまるティーエ。しばらくしても、何もされなかったので、恐る恐る目を開けると、チャイが舌を出していた。
「キスでも、されると思った?」
ティーエの頬が紅潮する。からかわれたのだ。自分が小さいから。幼く見えるから。
するりと抜けだして、保冷剤を押し付けて「し、知りません!帰って下さい!」と強く言うと、チャイは困ったように両手を上げた。
「まだ、痛い所があるんだ。」
「え?どこですか?」
嫌なことをされたのに、痛いところと聞くと黙っていられないティーエ。
「腸が、超痛くって。く、くくっ。腸が、超。くくくくっ!」
からかわれたのだとすぐに気づいてティーエは、顔を歪めた。
「帰って!帰って下さい!」
「可愛い顔なのに怒ったらもったいないよ。ほら、笑って。」
するりとチャイの腕がティーエの顎を掴む。そのまま白く細い首を片手で一掴みにされて、ティーエは息を詰まらせた。
「なんて、小さい。細い。お人形さんみたいだ。玩具みたい。かーぁわいい。」
ぐっと手に力がこもって、ティーエは息が苦しくて喘ぐ。怒りと酸欠で目の前が真っ白になる。
すっと両手を前に出して、ティーエはチャイの胸に手を当てた。
従順にも思える仕草に、チャイの腕が離れる。
刹那。
見えない手がチャイの服の下、皮膚の下まで入り込み、どくどくと脈動する心臓を掴んだ。血流が止まるように、けれど握りつぶさない程度に、そっと、それでいて力強く。
心臓を直に握られてチャイが呻く。
「あ……かはっ……!?」
脳が血を求めているが、止められた心臓はそれを送ることができない。だが、意識がなくなるわけではない。
酸欠に陥ってうずくまると、ティーエの手が離れて、チャイの心臓は再び動き出した。ようやく求めていた血を受け取って、脳が正常に動き出す。
「私は、玩具じゃない!もう一度言う。私は、玩具なんかじゃない!」
ぎろりとチャイを睨む目には、ティーエではない怒りの炎が宿っていた。
「ちょっと、チビ先生、怪我!いってえんだよぉぉぉぉぉ!」
盛大に血をまき散らしながら駆け込んできたニカの姿に、ティーエははっとして表情を戻した。
「あ、あの、ごめん、なさい?」
「い、いい、攻撃だったぜ。」
よろよろと診察室を出ていくチャイと、何がどうなったのか、口からだらだらと血を流しているニカ。
「どうしたんですか?」
「早口言葉大会やって、舌噛んだんだよ!わりぃか!このチビ!」
「わ、悪くないです!だから、静かにしましょうね。ほら、血が。」
「ち、ちぃぃぃぃっぃい!?早くなんとかしてくれよ!チビ医者!」
ニカに急かされながら、ティーエはガーゼを取り出した。
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