エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。
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その女性は容赦なくルリエナの腕を掴んでいた。
「君、屈んで。もっとよく顔を見せて。あぁ、いい!この顔だ!これを俺は求めていたんだ!」
この年になって「君」などと年下の女性に言われて、ルリエナは心底戸惑う。男性のような格好をしている細身の彼女は、目を輝かせてルリエナの青い目を覗き込んでいた。
「えっと、僕は、君と知り合いだっけ?」
女性関係をできるだけ避けてきたので、忘れてしまっているのかもしれないと思い、必死に考えるルリエナだが、30歳前後の若い外見にそぐわぬ42年間の人生で、こんな個性的な女性は初めてだと脳は告げていた。
「知り合いとか知り合いじゃないとか、どうでもいいの。もう知り合ったんだから。そして、俺は君を描くんだから!」
力いっぱい宣言されて、ルリエナは驚き身を引こうとする。長身のルリエナが身を引くと、彼女も引きずられた。
「で、でも、僕は君の名前も知らないし。」
「ワン・ユーリー。よし、これでいい。さぁ、上半身だけでもいい。脱いで!」
道のど真ん中で妙齢の女性にそんなことを言われるとは思わず、ルリエナは慌てふためく。
「そ、それは駄目!」
「じゃあ、その上着だけでも。」
「いや、それも。」
「体の線を見せてぇぇぇぇ!」
絶叫に近いユーリーの声に、周囲の視線が集まって、ルリエナは恥ずかしくなって顔を伏せた。そもそも、彼は目立つことが好きではない。
「こ、今度ね。」
そう言えばこの場は収まるかと誤魔化しの言葉を口にすると、ユーリーはルリエナの胸ぐらを掴んだ。
「今度っていつ?一時間後?明日?明後日?」
「いや、ほら、今日は、天気も悪くなりそうだし。」
雨はルリエナにとって天敵である。水を見ると、本性に戻ってしまう。鱗だらけの姿は、気色が悪いものでしかない。過去、何度も女性に逃げられた経験のあるルリエナは、雨を嫌っていた。
「天気なんて、大雨でも、嵐でも、俺は描く、描く!」
「落ち着いて。じゃあ、今度ね。」
これはもう逃げてしまうのが一番だと踵を返すと、ルリエナの長い足にユーリーがすがりつく。その姿はさながらゾンビである。
「かーかーせーてー。」
「ご、ごめん。僕、駄目なんだ。」
曇天の空は今にも泣き出しそうである。少しの雨ならいいが、すぐに家に帰らないと、大変なことになる。
「本当に、ごめん。」
ルリエナはユーリーを振り払った。ユーリーは地面に這いつくばって、ゾンビのように蠢いて追いかけてこようとする。
それを見ないように、ルリエナは走った。長い足のルリエナに、ユーリーは追いつけない。
「雨は、嫌いなんだ。」
そうじゃなくて、自分が嫌いだ。
そうは言えなくて、ルリエナはただ走った。
「君、屈んで。もっとよく顔を見せて。あぁ、いい!この顔だ!これを俺は求めていたんだ!」
この年になって「君」などと年下の女性に言われて、ルリエナは心底戸惑う。男性のような格好をしている細身の彼女は、目を輝かせてルリエナの青い目を覗き込んでいた。
「えっと、僕は、君と知り合いだっけ?」
女性関係をできるだけ避けてきたので、忘れてしまっているのかもしれないと思い、必死に考えるルリエナだが、30歳前後の若い外見にそぐわぬ42年間の人生で、こんな個性的な女性は初めてだと脳は告げていた。
「知り合いとか知り合いじゃないとか、どうでもいいの。もう知り合ったんだから。そして、俺は君を描くんだから!」
力いっぱい宣言されて、ルリエナは驚き身を引こうとする。長身のルリエナが身を引くと、彼女も引きずられた。
「で、でも、僕は君の名前も知らないし。」
「ワン・ユーリー。よし、これでいい。さぁ、上半身だけでもいい。脱いで!」
道のど真ん中で妙齢の女性にそんなことを言われるとは思わず、ルリエナは慌てふためく。
「そ、それは駄目!」
「じゃあ、その上着だけでも。」
「いや、それも。」
「体の線を見せてぇぇぇぇ!」
絶叫に近いユーリーの声に、周囲の視線が集まって、ルリエナは恥ずかしくなって顔を伏せた。そもそも、彼は目立つことが好きではない。
「こ、今度ね。」
そう言えばこの場は収まるかと誤魔化しの言葉を口にすると、ユーリーはルリエナの胸ぐらを掴んだ。
「今度っていつ?一時間後?明日?明後日?」
「いや、ほら、今日は、天気も悪くなりそうだし。」
雨はルリエナにとって天敵である。水を見ると、本性に戻ってしまう。鱗だらけの姿は、気色が悪いものでしかない。過去、何度も女性に逃げられた経験のあるルリエナは、雨を嫌っていた。
「天気なんて、大雨でも、嵐でも、俺は描く、描く!」
「落ち着いて。じゃあ、今度ね。」
これはもう逃げてしまうのが一番だと踵を返すと、ルリエナの長い足にユーリーがすがりつく。その姿はさながらゾンビである。
「かーかーせーてー。」
「ご、ごめん。僕、駄目なんだ。」
曇天の空は今にも泣き出しそうである。少しの雨ならいいが、すぐに家に帰らないと、大変なことになる。
「本当に、ごめん。」
ルリエナはユーリーを振り払った。ユーリーは地面に這いつくばって、ゾンビのように蠢いて追いかけてこようとする。
それを見ないように、ルリエナは走った。長い足のルリエナに、ユーリーは追いつけない。
「雨は、嫌いなんだ。」
そうじゃなくて、自分が嫌いだ。
そうは言えなくて、ルリエナはただ走った。
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