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エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。 時に短編小説もあるかも?
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 雨は嫌いだった。
 雨は水だし、レインコートを着ても傘を差しても、全部は避けられない。少しくらいなら大丈夫だけど、どしゃぶりの雨に濡れるとルリエナは本性である人魚の姿に戻ってしまうので、それが嫌だった。
 しかし、数日振り続く雨に診療所に閉じ込められてしまうと、料理のできないルリエナはあっという間に食糧難に襲われてしまう。
 仕方なく、レインコートにレインブーツ、傘という重装備で食料調達に近所のスーパーの閉店時間ぎりぎりを狙って、もしアクシデントが起きても暗闇に紛れられるようにと出かけたルリエナは、食料品を買い込んだ帰りに、白いものが視界をよぎった気がして目を瞬かせた。街灯にもたれかかって、何か白いものが動いている。
 それが人間だと分かるのに時間がかからなかった。
 真っ赤な血のついた白いワンピースを着た、びしょ濡れの青い髪の女性。靴も履いていないその足は、ウロコのびっしりと生えた人魚のそれだった。
 二つ足の人魚。
 ルリエナとは氏族が違うが、聞いたことのある珍しい種類の人魚を目の当たりにして、ルリエナは驚きつつも、声をかけずにはいられなかった。
「君、大丈夫?」
 ふっと、宝石のような目がルリエナを映す。
 しかし、すぐにそれは光を失い、彼女はルリエナの腕の中に倒れ込んできた。

 これが、ルリエナとヴィーラとの出会いだった。

 長年色んな飼い主のところを転々としながら飼われてきたという彼女は、最後の飼い主を殺して逃げて来たのだという。
 あっけらかんとした彼女の態度に、ルリエナは逆に痛みを感じた。
「ルリが泣くことはないんだ。私は大丈夫だから。」
 強く美しくたくましい二本足の人魚は、ルリエナの体を軽く抱きしめて言う。
「君が泣かないから、僕が泣くしかないんだよ。」
 涙を拭い、ルリエナは自分よりも小さな体を抱きしめ返す。
 愛情も同情もない。
 ただ、純粋な名前のつけられない感情が二人の間にはあった。
「私はヴィーラ。自分で名前をつけたんだ。悪くないだろう?」
 微笑む彼女は堂々としている。
「君はきれいだよ。」
 ルリエナは彼女の艶やかな青い髪を撫でた。

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