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エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。 時に短編小説もあるかも?
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 雨の日は、嫌いじゃない。

「ねぇ、サイガー出かけませんかぁ?」
 モルヒネにねだられて、サイガはコーヒーのマグカップをテーブルに置いた。昼食を終えたモルヒネは、どこかそわそわしていた。
「行きたいところでもあるの?」
「せっかくのいい天気じゃないですかぁ。サイガと歩きたかったんですけど。」
 その返事にサイガは苦笑した。
「雨の日のデートね。悪くないけど、どこに行こうか?」
「サイガーにはぁ、傘を貸してあげますよ?」
 ふふふっと笑んでモルヒネはいそいそと支度をしだす。レインコートに長靴。どこか子どものようなモルヒネの姿に、サイガは笑ってしまう。
「なんですか?」
 きょとんとした顔で聞かれて、サイガは首を振った。
「なんでもないよ、行こう。」
 笑いを止めよとするのに、止まらない。
 でも、決して嫌な笑いではなかった。体の奥底から、暖まるような笑い。
「レインコートが地味じゃない?」
 薄紫に星柄のレインコートが虹色に変わる。
「虹ですねぇ。」
「これなら、モルヒネがどこにいても見つけられる。」
「僕はサイガから離れませんから、見つける必要ないですよぉ。」
 そんなことを言いながら通りに出た。
 あてもなく歩いて行くと、見えてきたのは寂れた町外れの遊園地。
 こういうのはモルヒネが好きかもしれないと思い、サイガが声をかける。
「入ってみる?」
 モルヒネの目はもう輝いていた。
「いいんですかぁ?」
 そこまで言われると入らないわけにはいかない。
 霧のように細かい雨が傘を伝って雫となり落ちる。
 スキップして入っていったモルヒネは、ペンキの剥げかけた回転木馬や、きしみそうな観覧車、ちゃちな作りのゴーカートなどに声を上げる。
「サイガーあれも乗ってみましょうよぉ!」
 ぐいぐいと引っ張られてサイガはめいいっぱい引きずりまわされた。
 雨の寂れた遊園地は二人きり。
 狭い敷地にあるアトラクションを全て制覇して、それでもまだ足りないと動き出しそうなモルヒネの手を引っ張って、サイガは売店に入っていった。売店の従業員も奥のほうに引っ込んでいて、買ったものを食べるスペースはがらんとしている。壊れそうな椅子にモルヒネを座らせて、何か暖かいものを注文しに行こうと立ち上がるサイガに、モルヒネが手を握った。
 行かないでと無言で目が語る。
 冷たい手だった。何時間も雨にさらされたモルヒネの手。
 その指先に、サイガは音を立てて口づけた。
「すぐ戻ってくるから。こんなに冷えて。暖かいものでも、飲もう?」
「サイガー僕も行きます。」
 先程までの笑顔はどこに行ったのか、不安そうなモルヒネと手をつないだ。片手で水の垂れるレインコートのフードを外してやり、濡れた前髪をかき分けてキスを落とす。
「一緒に、行こうか。」
 曇ったモルヒネの表情が、ぱっと明るくなった。
「サイガの奢りですよぉ?」
「はいはい。奢るよ、可愛いモルヒネ。」
 つないだ手は、帰り道も離れなかった。

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