エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。
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「いてぇ!いてぇっつってんだろ!早く何とかしろよ!」
がんがんと平気な方の足で診察用のベッドの足を蹴りながら、脛をかすった傷を見せて暴れまわる赤い髪に赤い目のスーツの青年に、ティーエは完全に怯えきっていた。かすっただけだという銃創は、斜めに長く伸び、浅く広く皮膚を削っている。
止血をしなければいけない。そして、縫わなければいけない。
医学生のティーエには分かりきっていることだった。けれど、141センチしかない小さな彼女では、年下とはいえ自分よりも大きな青年を押さえつけることができないのだ。
「し、静かにして下さい。安静にしないと、血がもっと出ますよ?」
震えながら言うセリフに、青年、ニカは顔を歪めた。
「さっさとてめぇが処置すればすむ話しだろうが!」
「そんなに動いたら、処置できません!」
半泣きになりながらティーエが叫んだ瞬間、開いていた窓からすぅっと導かれるようにコウモリが入ってきて、ニカの顔面に貼り付いた。
「うおっ!?なんだ!?」
その隙を逃さず、ティーエはしっかりとニカの足を掴んで、ズボンを切り裂く。傷口を露わにして、蒸留水で洗い流し、麻酔を施すと、ニカは顔に貼り付いたコウモリをひっぺがして地面に投げ捨てていた。コウモリは「きぃ!」と抗議するように鳴いて、窓の外へ飛んでいく。
「縫いますからね。動いたら、変なところに針、刺さりますよ?」
「そうしないのが、てめぇの仕事じゃねぇのかよ?」
そう言いながらも、麻酔が効いてきたのか幾分大人しくなったニカにほっとしながら、ティーエはニカの傷口を縫い合わせていく。浅い傷口はすぐに塞がりそうだった。
「ニ三日は水につけないようにして下さいね。」
治療を終えて笑顔になったティーエに、ニカが無言で数枚の紙幣を差し出す。
「はい?」
「黙って受け取れ、このチビ!」
「は、はい!」
それが治療費だとティーエが気付いたのは、ニカが診療所を出た後だった。
束の間の休息の後、すぐに連絡が入る。
「2ブロック先で小競り合いだってよ、先生。」
走り込んできたのは、よく昼食を分けてあげているストリートチルドレンの一人。弟を探す情報源としても彼は役に立っていた。
「治療の準備、ですね。」
もらった紙幣の一枚を少年に渡し、残りをポケットに突っ込んで、ティーエは手を洗う。
足を引きずりながら診療所から出たニカが、なぜ、野良猫に引っかかれ、野良犬に吠え立てられたかは、双子の弟しか知らない。
がんがんと平気な方の足で診察用のベッドの足を蹴りながら、脛をかすった傷を見せて暴れまわる赤い髪に赤い目のスーツの青年に、ティーエは完全に怯えきっていた。かすっただけだという銃創は、斜めに長く伸び、浅く広く皮膚を削っている。
止血をしなければいけない。そして、縫わなければいけない。
医学生のティーエには分かりきっていることだった。けれど、141センチしかない小さな彼女では、年下とはいえ自分よりも大きな青年を押さえつけることができないのだ。
「し、静かにして下さい。安静にしないと、血がもっと出ますよ?」
震えながら言うセリフに、青年、ニカは顔を歪めた。
「さっさとてめぇが処置すればすむ話しだろうが!」
「そんなに動いたら、処置できません!」
半泣きになりながらティーエが叫んだ瞬間、開いていた窓からすぅっと導かれるようにコウモリが入ってきて、ニカの顔面に貼り付いた。
「うおっ!?なんだ!?」
その隙を逃さず、ティーエはしっかりとニカの足を掴んで、ズボンを切り裂く。傷口を露わにして、蒸留水で洗い流し、麻酔を施すと、ニカは顔に貼り付いたコウモリをひっぺがして地面に投げ捨てていた。コウモリは「きぃ!」と抗議するように鳴いて、窓の外へ飛んでいく。
「縫いますからね。動いたら、変なところに針、刺さりますよ?」
「そうしないのが、てめぇの仕事じゃねぇのかよ?」
そう言いながらも、麻酔が効いてきたのか幾分大人しくなったニカにほっとしながら、ティーエはニカの傷口を縫い合わせていく。浅い傷口はすぐに塞がりそうだった。
「ニ三日は水につけないようにして下さいね。」
治療を終えて笑顔になったティーエに、ニカが無言で数枚の紙幣を差し出す。
「はい?」
「黙って受け取れ、このチビ!」
「は、はい!」
それが治療費だとティーエが気付いたのは、ニカが診療所を出た後だった。
束の間の休息の後、すぐに連絡が入る。
「2ブロック先で小競り合いだってよ、先生。」
走り込んできたのは、よく昼食を分けてあげているストリートチルドレンの一人。弟を探す情報源としても彼は役に立っていた。
「治療の準備、ですね。」
もらった紙幣の一枚を少年に渡し、残りをポケットに突っ込んで、ティーエは手を洗う。
足を引きずりながら診療所から出たニカが、なぜ、野良猫に引っかかれ、野良犬に吠え立てられたかは、双子の弟しか知らない。
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