エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。
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麻婆豆腐と炒飯と唐揚げと皿うどん。並んだ料理に満足して箸を持ち上げた瞬間、正面のテーブルのスーツの女性と目が合って、ユンファはぎろりと彼女を睨んだ。
今日は研究のために金属を溶かして力を使ったので、ものすごくお腹が空いているのだ。誰であろうと、食事の邪魔をするものは許さない。
しかし、男物のスーツを纏っている彼女は、ユンファの威嚇に対してにこりと微笑んできた。年の頃は20歳前後だろうか。黒髪の若い女性。
近寄ってきた彼女はためらいなくユンファの前の椅子に腰掛け、こう切り出した。
「昨日、オタクの銭湯に、金の指輪を三つつけた年かさの太った男と、若い赤毛の女が連れ立って来なかった?」
男の顔は覚えていなかったが、金の指輪と言われてユンファはそれを思い出す。どうかそれを外して風呂に入って、忘れて行ってくれないかと、じっと男湯の方ばかり見て、若い慣れていない客をもじもじさせていたユンファ。先頭に来たのだから、番頭に裸を見られるくらいなんだ、と10歳になる前から番頭台に座っているユンファは思う。そんなに恥ずかしい物をつけているのかと。どれもこれも同じようなものではないか。
「掃除機みたいにうどんを吸い込んでないで、私の話も聞いてくれないかしら?」
彼女に言われて、ユンファは吸い込んでいたうどんを飲み込んだ。
「あんた、誰さ?」
「キサ。探偵よ。」
「それで?」
「あの男の浮気現場を押さえないといけないのよ、分かるでしょ?」
いきなり分かるでしょと言われても、分かるはずもなく、ユンファは拳大の唐揚げを一口で頬張る。
「ふぉれれ?」
「汚いわね。飲み込んでから喋りなさいよ。あの男が来る時間を教えて欲しいだけよ。」
「ああいう金持ちは二度と来ないよ。一度、見物気分で来て、うちの銭湯のボロさに辟易して二度と来ないのがパターン。」
あっさりと言うと、「そうよねぇ。」とキサも同意した。
「でも、もしも、もう一度来るとしたら?」
「例えば、女の方が化粧ポーチを忘れたりして?」
あまり金目の物が入っていなかったので、普通に忘れ物として保管してあるポーチを思い出して口にしたユンファに、キサがにっこりと微笑んだ。
勝利を確信した、美しい唇の形。
「来るなら、人が少ない夕方の5時。忘れ物を取りに来るだけならね。」
言いながら、ユンファはオーダーシートをキサの手に乗せる。
「高いわね。」
「情報はいつだって、安くないんだよ。」
もう話は終わったとばかりに、料理を再び吸い込み始めるユンファを置いて、キサは席を立った。料金を払うのを見届けるために振り返ったユンファは、キサの凛とした立ち姿に、一瞬だけ目を奪われる。
しかし、すぐに彼女の興味は料理へと戻っていった。
残りの料理が完食されるまで5分とかからなかった。
今日は研究のために金属を溶かして力を使ったので、ものすごくお腹が空いているのだ。誰であろうと、食事の邪魔をするものは許さない。
しかし、男物のスーツを纏っている彼女は、ユンファの威嚇に対してにこりと微笑んできた。年の頃は20歳前後だろうか。黒髪の若い女性。
近寄ってきた彼女はためらいなくユンファの前の椅子に腰掛け、こう切り出した。
「昨日、オタクの銭湯に、金の指輪を三つつけた年かさの太った男と、若い赤毛の女が連れ立って来なかった?」
男の顔は覚えていなかったが、金の指輪と言われてユンファはそれを思い出す。どうかそれを外して風呂に入って、忘れて行ってくれないかと、じっと男湯の方ばかり見て、若い慣れていない客をもじもじさせていたユンファ。先頭に来たのだから、番頭に裸を見られるくらいなんだ、と10歳になる前から番頭台に座っているユンファは思う。そんなに恥ずかしい物をつけているのかと。どれもこれも同じようなものではないか。
「掃除機みたいにうどんを吸い込んでないで、私の話も聞いてくれないかしら?」
彼女に言われて、ユンファは吸い込んでいたうどんを飲み込んだ。
「あんた、誰さ?」
「キサ。探偵よ。」
「それで?」
「あの男の浮気現場を押さえないといけないのよ、分かるでしょ?」
いきなり分かるでしょと言われても、分かるはずもなく、ユンファは拳大の唐揚げを一口で頬張る。
「ふぉれれ?」
「汚いわね。飲み込んでから喋りなさいよ。あの男が来る時間を教えて欲しいだけよ。」
「ああいう金持ちは二度と来ないよ。一度、見物気分で来て、うちの銭湯のボロさに辟易して二度と来ないのがパターン。」
あっさりと言うと、「そうよねぇ。」とキサも同意した。
「でも、もしも、もう一度来るとしたら?」
「例えば、女の方が化粧ポーチを忘れたりして?」
あまり金目の物が入っていなかったので、普通に忘れ物として保管してあるポーチを思い出して口にしたユンファに、キサがにっこりと微笑んだ。
勝利を確信した、美しい唇の形。
「来るなら、人が少ない夕方の5時。忘れ物を取りに来るだけならね。」
言いながら、ユンファはオーダーシートをキサの手に乗せる。
「高いわね。」
「情報はいつだって、安くないんだよ。」
もう話は終わったとばかりに、料理を再び吸い込み始めるユンファを置いて、キサは席を立った。料金を払うのを見届けるために振り返ったユンファは、キサの凛とした立ち姿に、一瞬だけ目を奪われる。
しかし、すぐに彼女の興味は料理へと戻っていった。
残りの料理が完食されるまで5分とかからなかった。
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