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エデンの鍵に関する情報を置いていくブログ。 時に短編小説もあるかも?
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 一人で歩く暗い道。
 誰も助けてはくれない。
 涙は拭いても拭いても零れていく。

 SilenceOrNoisy

 静けさか雑踏か。
 そのどちらもいらない。
 私には、いらない。


―――――――――――――――――――――――


「今日で最後にしておくれ。」
 ユンファはキリシュを追い出した。

 別に深い理由があったわけではない。
 しかし、いつか来る別れならば、自分できちんとけじめをつけたかったのだ。
 ずっと一人だった。
 確かに自分を拾ってくれた両親はいた。
 けれど、自分が異質な存在だということを昔から知っていた。何かが違うのだ。
 人は一人で生きて死んでいくもの。
 だから、誰の手も取らずに歩いてきた。


 最終戦は、ただ部屋に入るだけだった。
 案内されて、三日分の食料とともに部屋に入ると、そこは薄暗かった。
「電灯くらいないのかねぇ。全く、ケチなことだ。」
 毒づきながら、何もない部屋に座っていると、向こう側に誰か座っていることに気付いてユンファは目を凝らした。
「あんたが、最後の対戦相手かい?」
「さぁ、どうだろうね?」
 小さな褐色の肌の長いこげ茶色の髪の少女が、こちらを見上げている。
「誰?」
「梁遠花(リョン・ユンファ)。」
 平然と答えた少女に、ユンファはふぅんとうなる。
「同じ名前だね。奇遇だ。」
「じゃなくて、私があんたなんだよ。」
 丁寧に説明をする少女に、ユンファは首を振った。
「あんたは、私じゃない。」
「じゃあ、僕は?」
 ふっと少女の姿が揺らいで、灰色の髪の男性になった時、ユンファは顔をしかめた。
「あんた、運営の……。」
「ルリエナ、だよ。覚えてない?君は19で、一人で泣いていた。」
 19歳の時。
 ふっと蘇りそうになった記憶に、ユンファは蓋をしようとした。
 けれど、上手にそれができない。


 小さい頃から苛められっ子だった。友達といえる存在は全くいなかった。
 それでも、友達と思えた同じ年の青年がいた。
 友達だと思っていた。
 彼に乱暴されそうになって、思い切り金的をして逃げてくるまで。
 そして、泣きながら一人で薄暗い道を帰る途中に、このうすらぼんやりとした男に出会ったのだ。
「どうしたの?」
 服も破けてぼろぼろのユンファに、ルリエナは上着を貸してくれた。薬の匂いがする重い、大人の男の上着だった。
「どうもしないよ。」
「分かった。」
 それ以上聞こうとせずに、一緒に歩いてくれたルリエナ。
 結局、彼は家までユンファを送ってくれた。


「私は、あんたが好きだったのかな?」
「さぁ、僕には分からない。」
 たった一度だけだった。
 一度だけ、そばにいてくれた相手。
「でもね。」
 ユンファは笑う。
「やっぱり、あんたはルリエナじゃないんだよ。あんたは私。私の甘えた部分。」
 すがりつきたかったり、寄りかかりたかったりする瞬間に、見える幻。
 そう告げた瞬間、ふっと何もかもが消えうせた。
「じゃあ、私の勝ちかな。」
 そう言って扉を開けに行こうとするユンファだが、猛烈な空腹感に襲われて座り込む。
「え?ちょっと、待って!?」
 孤独よりもユンファが怖いもの。
 それは飢餓だったのかもしれない。
「駄目!死ぬ!死ぬぅ!助けておくれ!」
 あっという間に三日分の食料を食いつくし、ユンファは叫んでいた。


 沈痛な面持ちで負けたことを報告しに本部へ行くと、レノリアがいて、ユンファは駆け寄る。
「レノリア、お腹すいた!ご飯食べに行きたい!」
「仕事が終わったらね。」
 軽くあしらわれて、ユンファは頬を膨らませる。
「レノリア、あんたは、ずっと友達だよね?」
 孤独より飢餓が怖くなったのは、彼女のせいかもしれない。
 彼女ならば、ずっとそばにいられるかもしれない。
 そんなことを思うと気恥ずかしくて、ユンファはもう一度声を上げた。
「お腹がすいたー!」



梁遠花  四回戦 負け 星1個のまま

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